馬来西亜 生活月記                           


この月記はバンコクで出版されている月刊誌G-DIARY(クエストメディア刊)に連載中の記事(マレーシアでのあれやこれやの出来事)に若干の加筆をし転載してます。



第1話 マレーシアの道路事情!?
 (2004年6月号) 

とにかく「アジア」に飛び出てみたかった。17年間日本でサラリーマンをやっていた。某タウン情報誌の編集長という立場で、仕事そのものは面白く感じていたのだけれど、その反面様々なモノであったり情報であったり、常に「何か」で満たされすぎている日本での生活はどこか味気なく感じていたのもある。「アジア」の未完成なところ、不完全なところ、でもなんだか凄いエネルギーを秘めているところ、そんな部分に惹かれていたのかも知れない。仕事の休みが取れるたびアジアの国々を回った。そしてこの4月ついに家族まとめてのマレーシア移住が半分勢いで実現したのである。住まいは首都クアラルンプール(以下KL)の西方約30km、シャアラムというところである。KLとの間にはフェデラルハイウエイという区間によっては無料の高速道路で結ばれているのだが、曜日や時間帯、天候などに応じて移動時間が20分だったり2時間もかかったりと変化するバクチのようなハイウエイなのだ。そればかりか混雑の状況により、走行車線が4車線だったり6車線に変わったりと非常にフレキシブルである。ドライバーの運転マナーはお世辞にもいいとは言えない。というか、よく道端にひっくり返った車が放置されてるのを見る。ふだんは温厚だと言われているマレーシア人だが、どうやらハンドルを握ると何かに「変身」するらしい。こちらで事故るとマレー語ができないと処理自体が不利になるというし保険会社からの出金も気が遠くなるほど遅いそうだから、トロいと思われようが慎重にハンドルを握る毎日だ。それから道路地図がまったく当てにならない。気が付けば新しい道路が次々とできるのに、根本的に「いい加減」なのである。一度地図を信じてその通り走った結果、目的地とは正反対のとんでもない方面へ行ってしまったことがある。それ以来地図はほとんど見なくなった。


第2話 電球爆発事件? (2004年7月号)

 またヘイズの季節がやってきた・・・。エイズではない。インドネシアの住民が焼畑農業を行い、それによって生じる煙が海を渡ってマレーシアを覆い尽くすというアレである。空は黄土色にどんより曇り、咽喉がいがらっぽく頭痛までする。まったくもって迷惑な話だ。よほどインドネシアに飛んで近代農業を叩きこんでやろうかと思うが、こればかりは文句のつけようがなく耐えて忍ぶしかない。さて前回の道路事情の話に引き続き、今回はマレーシアの電気事情について語りたいと思う。アジアの大体の国ではそうだと思うが、こちらの電圧は
220240Vで供給はテナガナショナルという政府の電力会社によって運営されている。電気屋にいくとPensonicHanabishiMECといった多分それが日本製だと誤解しているユーザーが多々いるであろう中国系のメーカーの製品がならんでいる。恐るべし中国である。俺の富士通のマルチボルテージのPCなんかはコンセントプラグの変換でそのまま使えるが、そのうちにアダプターのボックスが異様なくらい熱くなってきていつも一抹の不安を感じる。そのくらいなら全然許せる話なのだが、他にも日常で自分の常識外の超常現象が発生するのだ。まずエアコン。暑がりの俺にはこれがないと生きていけないくらい重要な電化製品なわけだが、ある日家のエアコンが「ガタガタガタガタ・・・」という異様な音を出して唸り始め、次いで冷気口からなんと氷の塊が噴き出してきたのだ!すぐに修理屋を呼んで直してもらった翌週、今度は冷気がいきなり温風に変わり続いて大量の水がさながら華厳の滝のようにほとばしって落ちてきた。しばらく滝は止まらずバケツで受け止めていたのだが、次は何が飛び出してくるかと思うとエアコンの真下にはいけない日々が続いている。次に電球。ある日帰宅して部屋の照明のスイッチを入れた瞬間「ボン!」と音がして電球が破裂したのだ。真下に誰かがいたらと思うと怖くなるが、こちらの友人に聞くと「ごくごく当たり前」のことなんだそうだ。他にも知り合いの事務所のPCのディスプレイが突然爆発した話も聞いた。実際俺のオフィスのPCも1日に何度か「バチッ!」というでかい音を出す。爆発か!?とその度に飛びのくのだが、まぁ今はいい眠気覚ましになっている。やはり高い電圧のせいなのか、それとも「世界一カミナリの多い国」として認定されたマレーシア特有の気象条件が原因なのか、はたまたテナガナショナルの変電所のおっさんがたまに間違えて電圧を1000Vくらいに上げてしまうからなのか、いまだに謎は解けない。他国ではどうなんでしょ?


第3話 理解不能な法規制 (2004年8月号)

 今回はマレーシアの様々な法規制に関して書こうと思う。それは猫の目のように変わる。決め方自体がイージーで、何かコトが起こってこれは自国に合わないと判断されるや否や次の日には突然変更されていたりすることがある。まぁそれは許そう。俺が疑問なのは、その理由付けが全然見えない規制とか、ちょっと設定に無理があるんちゃうの?という規制が存在してる、ということ。一例が「英語混じりの歌放送禁止!?」規制。これはRTMという公営放送で最近起こったことだがマレー語歌謡曲の歌詞に少しでも英語が交ざると放送されないっていう変なキマリ。俺はあまりローカル歌番組は見ないけど、理由は「英語には卑猥なコトバが多い」ということらしい。んじゃマレー語にはみだらで卑猥なコトバがまったく無いんかい?と思い聞いたらこれがまたわんさかある。ここじゃ書けないけどね。それと英語以外の外国語が混ざってるのはOKだそうだ。さらに外国人が歌う英語の歌は全然OKってことが混乱に輪をかける。管轄の情報省の大臣のコメントが「英語そのものではなく、みだらな言葉を禁止するためではないか・・・」とよくわからん回答。ほんなら誰が決めたんや!「ではないか」ってアンタ(脱力)。他には「若い中国人女性観光客の親か夫の同伴義務づけ!?」規則。理由は、観光でマレーシアに入国したのに売春婦になる中国人が後を絶たないから。ここはいわずと知れたイスラム国家なので風俗産業は許されない存在だ(実際は公然とあるんだけど)。そこで内務省は10歳〜25歳の中国人女性には親か夫の同伴で入国を認める、というキマリをつくった。親が一緒なら売春には走らん、って「風が吹いたら桶屋が儲かる」みたいな理屈と一緒ちゃうの?ちなみにこの規制は中国側からの強い抗議ですぐに消えた。(そら怒るわな)中国内務省は仕返し?で「マレーシアにいったらひったくりに注意して!」と国民に呼びかけている。どっちもどっちかぁ(笑)


第4話 日本人のアイデンティティー? (2004年9月号)

 Gダイ姉妹紙の「ポメロ」を杉山氏から送って頂いた。自分が日本でつくってたホットペッパーと比べて紙質もセンスも全然いいしスタッフ全員で「創ってる♪」って呼吸が伝わってきた。くれぐれも製版時、Gダイの市内マップが混入しないことを切に祈ってます(笑)。さて今月の本題へ・・・・。マレーシアはよく「民族のモザイク国家」として取り上げられる。人口の6割は「ブミ」と呼ばれるマレー人だが、他に中国人、インド人そして不法滞在されていらっしゃる国籍不明な方々など。各民族は融合せず、かといって反目もせず互いを尊重(無視?)しあって生活を営んでいる。メシを食いにいくと暑苦しいトゥドゥン(被り物)を被ったマレー人の女の子と、ミニスカートをずり下げてケツの割れ目が見えているチャイニーズの女の子が仲良く並んでるのを見て「なるほどな~」と実感したりもする。民族融合策をとらず、あくまでそれぞれの「血」にこだわりながらも共存してきたところが隣国タイランドとは異なる点だろう。それでいて各民族固有の祝日はちゃっかり国民全体の休日となるので(イスラムのハリラヤ・ヒンドゥーのディパバリ・ブディストの旧正月とか・・・)お前らいつシゴトするんじゃい!という状態でもある。我々日本人としてはなんとか働きかけてせめて「盆と正月」ってのを定着させたい・・・って1万人そこそこじゃあかんかぁ。んでもって、日本人の「アイデンティティー」は?っていうと、これがあるようで感じられない。日本人自体がいくつかのカテゴリーに分かれている理由もある。曰く@駐在員の方々(現地採用含む)・Aリタイアして老後を送ってる方々・B学生さんとか・C自営業・自由業(正体不明な人含む)、ってとこだが、この「4民族」は実際遭遇することは稀で、生息時間や場所・可処分所得なども微妙に異なるため、「尊重」どころか「存在」すらお互い知らない状態である。丁度アフリカのライオンとアジアのトラが出会わないのと似てるか?そんなわけで常々「日本人」を感じなきゃならない局面は日々薄れ、自分の顔も日本人からどんどん遠ざかっている。実際こちらに20年ほど暮らしていて、歩く化石または生きた標本とも呼ばれる引越し業のSさんのことは(大学の大先輩だが)口を利くまで日本人だとは気づかなかった。まぁ今は経済も世界的見地でないと動かない「ボーダレス社会」でもあるので、格段「民族のアイデンティティー」なんてどうでもよくなっていくのかも知れないけど。


第5話 電車でGO! (2004年10月号)

 子供の頃から鉄道が好きだ。性格は決して暗くない。しかし「電車でGO」などやると陶酔してしまう。アジアでも電車の写真ばかり撮ってしまうが、「花電車」というのだけはよく知らない。というわけで今回はマレーシアの鉄道についてレポートしたいと思う。KL中心部・近郊では現在、KTM(国鉄)・空港行きKLIAエクスプレス・プトラLRT・スターLRT・KLモノレールの5つの鉄道が運行している。LRTとはバンコクのBTSのような高架・地下方式の輸送機関だ。車の渋滞が問題視されている当地においてこれらを使えば、市内のほとんどの場所へ行き着くことができる。渋滞知らずで時間もよめるし、すぐに尿意が押し寄せるほどの冷房が効いていてとても快適だ。しかし、しかしだ。人々は車を使うのだ。最近の調べではここKLはアジアの主要都市の中で最も公共交通機関の利用率が低い街だという。何故なのか?俺は実際に乗ってみて追及してみることにした。決してヒマなわけではなく、好奇心だけは人10倍強いのだ。まず気づいたのは、その存在意義がよくわからん駅が多数存在していることだ。要は周りに何も存在せず駅だけがポツンと建っている。レールを引いたから一定距離で適当につくりましたというノリの誰も乗り降りしない駅が結構ある。次に異なる交通機関同士の乗り継ぎの悪さに気づいた。同名の駅ならば普通同じ建物で隣接していたり連絡通路で結ばれたりしていていーのだが、例えばKTMとモノレールのKLセントラル駅は道路を挟んで中途半端に500mは離れており荷物のあるときなどめちゃ不便このうえない。それから鉄道駅から最寄のバス停まで1kmくらい離れているのもざらにある。誰がクソ暑い中乗り継ぎのためにそれだけ歩くのか!?いや、昨今運動不足が指摘されるので国民へのささやかな計らいなのかも知れん。あと最新鋭のモノレールがお披露目のときに見物人の頭にボルトを落として運行開始が延期になったのも記憶に新しい。車体そのものが落ちないことを願う。見ようによってはシンガポールの街にも負けないような快適な車体が走ってるのだが、運用においてはカルカッタにいるかのような光景がくりひろげられる。「猫に小判」とはこのことなのか


第6話 ラマダン(断食)と体内時計 (2004年11月号)

 町は今イスラムのラマダン(断食月)に突入している。俺は死んでもそんなもん体験したくないけど、子供とかまでやってるのを見たらそれはそれで偉いと思う。ムスリムの人たちに勝手にやってもらうのはいいけど、仕事にことごとく支障が生じている。10月に入ると人々は仕事をしなくなり、本格突入からは姿を消す人が多々現れた。知人も3人消えた。依頼物の納期は無視。電話で苦情を言っても「廃人」同様になってるのでセツナイ。(この号が発売される頃にはすっかり元の能天気な国になってるよーに)メシ食ってるのをマレー人にジッと見つめられるのはもっとセツナイ。
 さて今月は「マレーシア人の体内時計」について書きたいと思う。周辺他国の人たちも似たようなもんだとは思うけど、とにかく何事も遅い。ホンマに何事も。特に光速ジェッターの国、大阪からやってきた俺は最初なにもかもが許せんかった。スーパーのレジの兄ちゃんの袋詰めが異様に遅く1品ごとに新しい袋を用意してた時はマジで俺が代わった。あとミネラルウオーター買おうと思った時、12本入りの箱がとっても高いところにあったので近くにいたねーちゃんに、あれとってとお願いした。姉ちゃんは「ちょっと待ちーや」といってどこかへ行った。15分が俺の我慢の限界やった。同じことがその後の違う姉ちゃん2人くらいでも起こり、合計1時間くらいはまたたく間に過ぎた。おかげで生まれてからの人生の走馬灯もゆっくり見れた。お前らは瞬時に記憶喪失になるんか?キレていた俺は売り場責任者らしいおっさんを捕獲、ようやく脚立で箱を下ろしてもらったら、その中身は「空」やった。冗談のような国だ。そんな俺もこちらで暮らすうち、そういうことが許せてくるようになった。気がつくと幽体離脱し5分くらい静止することも増えてきた。でものどかな国にもひとつだけ例外がある。車の運転だ。男も女もギラ(キ○○イ)に変わる。たった5cmのスキマから疾風のような速さで後続車が割り込む。バイクは高速で飛ばす俺のクルマの前を直角に横切る。木下大サーカスが日夜ハイウエイで繰り広げられる。この時だけは体内時計のゼンマイをとりかえるんだろう。これは人類学的な仮説だが、恐らくクルマの運転がコマネズミなので疲れ果てて普段はナマケモノになるかと推測される。

第7話 低物価&高金利の幸せ (2004年12月号)

 出張で久しぶりに日本に帰国した。郷里の京都に帰るとすっかり気分はおのぼりさんでついつい嵐山見物などもしてしまった。あらためて痛感したのがクレイジーな日本の物価。普段90sen(約26円)のテタリッ(ミルクティー)をたしなんでる俺には、日本の喫茶店の400円というコーヒー代がこたえた。わずか10日間の帰国だったけど、交通費・電話代・食事なんかで気がついたらマレーシアでの3ケ月分くらいの経費が軽くふっとんでいた。
 
てわけで今回は物価水準についてのハナシ。日本とアジア各国との間には当然ながら「物価水準の格差」が存在する。先進国ほど日本とは変わらず、途上国ほど格差が激しいのはご存知のとおり。マレーシアでいうと丁度中間地点なんやろうけど、ザクッというと日本の1/41/3というところか。(1リンギット=約29円)生活インフラや消費財なんてのはより低水準(場合によっては日本の1/10)一方高級品や最新の機器なんかでいうと同じ水準だったりもする。典型的な俺の1日をむりやり円換算すると、朝コーヒーショップで26円のお茶、170万円で買ったボロボロの愛車でガソリンスタンドへ行きリッター40円で給油。日本からの友人を迎えにKLIA(エアポート)へ。70Kmのハイウエイの通行料150円をトールゲートで払い突っ走る。空港で駐禁をとられてしまい、その場で4200円の罰金。市内に戻り停め放題60円のパーキングに駐車、友人と150円の昼飯を食す。18スクリーンの豪華シネマで封切り初日のロードショウを210円で見た後は、ちょっと贅沢してCD屋で日本の新譜を1200円でGet。晩飯は超豪華に海鮮中華1人2000円也。クルマを買い換えたいけど日本の新車は新築の家と同じくらいの500万もするからしばらく辛抱、ってカンジか。まあとりあえず贅沢さえしなければ、月10万円あったら十分楽しく暮らせるってカンジ。
 あと、銀行預金の利率もとってもGood。一番おとなしいFIX3.7%固定、ちょっと器用なプランだと15%で回るのもザラにある。さらに日本のようにキャピタルゲイン課税なんてセコイものはないので至ってシンプル。知り合いに日本から持ってきた全財産1000万を26%で回してまったくノーインカムなのに贅沢に生きてるヤツがいる。さらにさらに、中国元の切り上げに連動してリンギットの切り上げが(現在はドルペッグ)毎日新聞で噂されてるので、現在ジャパンマネーが流れ込んでる模様。キョーミある方は指導しますので連絡下さい(笑)

第8話 日本ブームと人口増加予測 (2005年1月号)

 マハティール時代から推進されてきたマレーシアのルックイースト施策は、良きも悪きも日本を見習おうということで(最近は韓国からも)2020年に先進国入りしようというこの国の一貫した流れである。俺がそんな中で商売をすすめてきた中、本気で先進国になるつもりはないんとちゃうか?と思えることは実際はすごく多い。多分100年以上はかかると思う。今回はそのことは置いておこう。実際「日本人」であることはやはりラッキーに作用する。「日本人」=きちんとしている人、「日本のモノ」=優れた品質、「日本の流行」=最先端という幻想があるため、いろんな場面で結構得することがあるし、そこはそういうイメージをつくりあげた先達にスナオに感謝している。マレーシアは台湾とならんでアジア唯一の「日本に占領されたのに、とっても親日的な」国である。テレビのアニメや日本漫画喫茶なんかの他、カラオケBOX、回転寿司、10分散髪屋、牛丼、プリクラハウス、ゲーム機など機を見て敏な日本企業が出したものはまずヒットしてるし、ローカルもスナオに飛びついている。俺も大阪でブレイクしていた「ねるとんお見合いパーティ」をやれば成功間違いなしと思いひそかに準備中である(書いてしまったら全然ひそかじゃないか)。パチンコなんかも誰かが持ってきたら受けるんかなーなんて思う。日本語学校なんかも大はやりで、とんでもなく可愛い娘から日本語で話しかけられたりすると「生きてて良かった」と思う。実は50年スパンでの予測人口増加率はアジアの国ではマレーシアがダントツTOPである(2位はフィリピンだったっけ?)。今2500万人の小国だけど、じき確実に5000万人になるのである。今は金持ちミドルがマーケティングの中心だけど、ベビーブームの今これからは若いやつらにちゃんと訴求する商材やサービスであれば小難しいこと考えることなくそこそこ成功していくのではないかと考える。てことで、最近の趣味は「自分のガキンチョ時代に頭をプレイバックさせ、何をして遊んできたっけ?」と走馬灯のように思いを馳せることだ。でも、中進国のもつ独特の素朴さはそれはそれで捨てがたく、結局今の日本のように進化してしまったらつまらないのかも知れない。


第9話 交通違反とアジアFTA交渉の関係 (2005年2月号)

 大晦日の夜の出来事である。俺は毎年恒例のカウントダウン花火が今年は中止になってしまったため、家へ帰って酒でも飲むか!とクルマをぶっとばしていた。イベントが中止になったのに街は大渋滞で、いらいらしていた俺はついつい黄色いラインで区画されたバス・タクシー専用レーンを走ってしまい、待ってたかのようにその先にいた白バイのポリスに止められてしまった。ちょっとだけボブサップに似ていた彼はつかつかと歩み寄ると、険しい表情で「300リンギ!(約9000円)」と吠えた。日本円では3万円くらいの感覚なので、これは痛い。とにかく下手に出たら放免してもらえるだろうと判断し、クルマを降りて「私は来たばかりの新米日本人で標識の文字も何も読めない」と日本人らしいおじぎを3回くらいした。するとポリスは「お前がフランス人だろうがモンゴル人だろうがそんなこと関係なーい!」と余計逆上しだしたではないか。マズイ。拘置所へでも連れて行きそうな鬼の形相だ。その時俺の頭の中のスーパーコンピュータが急回転した。仁王立ちするポリスにヒソヒソ声で「こんな大晦日まで働いて市民の安全を守る勇敢なあなたに、ささやかだがプレゼントがある」とささやくと、急にポリスも身をかがめ「いくらなんだ?」と尋ね返す。結局30リンギ(900円)をライセンスの下に挟み再度差し出すと、彼の顔は天使のような幸せに包まれ、急に日本語で「ドモアリガトウゴザイマス」とおじぎを返した。コラプション(賄賂や汚職)は無論この国でも立派な罪である。そこんところは俺もよくよく理解しているつもりだ。なのに何故こんなことが日常的に起こっているのかというと、昔マーケティング理論で学んだWin-Winの法則に突き当たる。ポリスの立場で言えば「3万円に満たない月給」と「すごく煩雑な外国人の交通違反処理」という事実がある。一方俺の立場は「罰金を少しでも抑えれば、いいウイスキーを買えてHappyな新年を迎えられる」という思いがある。なので双方ハッピーな状況がその場で生まれたわけで、今回は何が言いたかったかというと、スローモーなアジア政府間のFTA交渉もこれくらい迅速に折り合ってまとめるべきだと、常にアジアの共存による相互発展を願う俺は考えるわけである。

 

第10話 インドはやっぱり熱かった! (2005年3月号)
 
 今回は「特別編」としてインド訪問レポートをお伝えしたい。マレーシアの人口の約10%がインド系で占められているのは過去のレポートで書いたとおりだ。彼らは独特のコミュニティにて暮らしており職業は医者・弁護士・コンピュータ技術者・カーパーキングの門番など多岐に渡るが、共通点は「記憶力の良さ」につきると思う。なにせ小学校で2ケタの九九を覚える恐るべき国なのだ。またマレーシアはアセアンでは最大のインドとの交易国であり、私もインド人との商売が増えてきたこともあり、1月に南インドに視察に行ってきた訳である。南アジアの玄関口であるチェンナイは人口4番目の大都市であるが、年末のスマトラ沖大地震で大きな被害を受けた街でもある。まずはそれが心配で海岸沿いに車をとばした。確かに仮設住宅が並んだり、船が道路の上に打ち上げられてたりと傷跡は見られたが、もう街はすっかり落ち着き何事もなかったかのような毎日に戻ったとのこと。波打ち際ではたくさんの男が「座りウンチ」をしていた。彼らにとって海は壮大なトイレなのである。思うに津波が襲ってきた瞬間も多くの人が座りウンチをしていたに違いない。シチュエーション上逃げるに逃げられないものね。などと悲しく思いを巡らせてたら3度もウンチを踏んづけてしまった。ちなみに直後連れて行かれた食事は「カレー」だった。
チェンナイから隣の大都市バンガロールへ特急列車で移動した。窓の外を流れる景色は「世界の車窓から」そのものである。IT都市といわれるだけあって、街中にサイバーカフェとか無線LANのスポットがあり、結構垢抜けた街だ。
バンガロール大学の日本語学科で突然飛び入りで授業をさせてもらうという体験をした。終了後に女子学生たちに囲まれてかなりHAPPYになる。インドへ行くと神経が磨り減ると思い込んでいたが、ここ南インドでは殆どイヤな思いもせず拍子抜けしたのが実際である。余談だが、インド人は「YES」のときに首を縦には振らず左右にグラグラさせるアクションをとるのだが、それが不二家のペコちゃん人形にソックリで、面白いのでしつこく真似していたら完全にクセになって直らなくなってしまった。

 

第11話 大トカゲ退治に見るマレー民族の謎 (2005年4月号)

 最近マラッカ海峡を騒がせた海賊事件がようやく収束した。津波で喪に伏していたインドネシアの海賊たちもそろそろ活動を再開したというところか。今回はとりわけ日本人が連れ去られたということで日本のテレビもこぞって大騒ぎしていたが、何もこれは初めての出来事ではない。今に始まった事ではないが、国際的事件に日本人が絡んでいたときだけは大騒ぎし、そこでやっと対策を打たなければということになり、んでしばらくしたら何事もなかったかのように忘れ去る。津波のときも同じだったけど、どして日本人はいつもいつも同じようなリアクションなんだろう?日本のマスコミのかたよった報道のおかげで、心配性の母親の頭は、当地が「大地震と津波が頻発し、海に出たら海賊に即襲撃される」世界一デンジャラスなエリアとして確立されてしまい、毎朝来る「昨日は大丈夫だったか?」というメールにいちいち答えるのが大変面倒になってきていたところだ。
 マレー人もインドネシア人も共通の先祖を持つ「親戚のような」民族であり、一般的には非常に人懐っこく平和的・フレンドリーな代わりに、体内時計が日本人のおよそ3倍くらい遅いスピードで回っており、突っ込むとすぐに「アラーの神」が言い訳に登場するという、なんだか無害で憎めない人たちというのが俺の印象だが、時としてとんでもなく残忍になったり凶悪事件を起こしたりもする。以前の号でも書いたが、例えば車のハンドルを握った瞬間、ギラ(キ○○イ)へのスイッチが入る人は多いし、トロイ車に不用意にクラクションを浴びせると、停止して中からバラン刀を持った目の据わった奴が降りてくるというのもよくある日常光景だ。
 かと思えば、彼らは非常にシャイで怖がりでもある。先日知り合いの工場に1mを超える大トカゲが出た。工場はパニックで従業員のマレー人は皆家へ逃げ帰って操業がストップした。社長は慌ててレスキュー隊を呼んだが、やってきた隊長は殺虫剤のスプレー1本持ってきただけで「シュッ」と噴きかけただけで同じく逃げ帰ったという実話がある。この2面性については現在深い研究データを精査中であるが、未だ解明できていない。ちなみに大トカゲを誰が持ち帰って食うかということが原因で、その後現場に残っていた中国系とインド系の従業員の間で大喧嘩が勃発したことも付け加えておく。

 


第12話 マレーシアとことんランキング! (2005年5月号)

 現地の新聞などを読んでいると、各国と比較してのマレーシアまたはKLのあらゆるランキング評価の記事をよく見る。自分の位置を気にするのはなにも日本人の専売特許でないことを認識できたようで面白い。ここ半年の間で発表されたさまざまなランキングをあげてみよう。@日本人海外旅行者の伸びの高い国→アジアで3位(JTB)、Aビジネスのしやすい国→世界41ケ国中7位(TNS)、B国際競争力総合ランキング→世界16位(WCY)、C物価の高い都市→世界98位(エコノミストインテリジェンスユニット)D2050年までの人口増加率予測→アジア1位(PRB)などなど・・・ここまではこの国の治安の安定・物価の低さ・自由度・暮らしやすさ・ビジネスマーケットの拡大などの面で、ポテンシャルや可能性が思ったより「高い」という評価を素直に喜ぼうと思う。事実政府はセカンドライフ支援目的で日本からも高齢者をどんどん誘致しているし、日本でもその手の番組で海外移住がテーマになると必ず登場もする(俺も先日思わず「あるある大辞典」で茶の間に登場してしまったが)。しかしである。いい面ばっかり言うと絶対よくないのである。メッキが剥がれるのである。俺にも日本から長期移住の相談などをよくいただくが、いつもありのままを伝えることにしている。「話が違うやん!」って恨まれるのはイヤだもんね。てことでランキングの続き。E電車・バスなどの公共交通機関の利用率→アジア・ワースト1(意味不明の場所に駅があったり、ちゃんと走ってないから仕方ない)、F国民の肥満率→アジア・ワースト1(人口の25%が太りすぎの肥満・年間300万人が成人病発病。勿論俺もかなりヤバイ・・・)、とどめはGクレジットカード偽造量→世界一、H海賊版CDDVDの生産量→世界一(米国通商代表部)、勿論チャイナタウンでは無修正エロDVDはいくらでも手に入るけど、現地需要の20倍くらい生産してるので、まさに「世界のエロ工場」に成長している。こうやってばらばらのランキングを串刺しにするとかなり強引な相関も見えてくる。C(食い過ぎ)+E(まったく歩かない)=F(肥満)とか、A(ビジネスがしやすい)⇒ G、Hの生産性向上・輸出額急伸に繋がるとか、まったく「わかりやすさ」でも世界トップクラスかも知れない・・・・。


第13話 詐欺師たちに騙される人間心理 (2005年6月号)

 先日こちらの新聞に掲載されたとある犯罪記事を読んで目が点になった。それは、アフリカ人の一味が現地の人間に声をかけまくり、真っ黒な紙片をある特殊溶液に浸すと、あら不思議!その紙片が本物のUSドル紙幣に瞬く間に変身、という件だ。被害者たち(お金が大好きなチャイニーズ中心)は逆にあれこれ口実をつけられ巨額のカネを巻き上げられて、総被害額は未曾有の巨大詐欺事件となった。しかもこれには現地ポリスの幹部も加わっていたということで恐れ入る。これを読むや否や以前Gダイにレポートされていた怪しいアフリカ人の手口とまったく変わりないことに気づいた。被害者たちはGダイさえ読んでいればこんなことにはならなかっただろうと悔やまれる。想像するにバンコクでこの手口で稼いでいたアフリカ人の一味は、騒ぎが大きくなると南下して、きっとここKLで同じことをやらかしたのだと思う。彼らはこれからも新しい国でカモを探して回るんかも知れない。まさに秘密結社ショッカーだ。と感心していたら、先日俺のビジネスメールにわけのわからないガーナ人からメールが届いた。読んでみるといきなり大金持ちになるようなお誘い文句。思わず引き込まれクラッときたが慌てて消去した。
 かと思えば、超有名な古典的詐欺にいまだにひっかかる日本人も多い。「じゃらんじゃらん」という当地では有名なお助け情報交換サイトに、先日「トランプ詐欺に引っかかりました・・・」というツーリストからの投稿があった。路上でいきなり声をかけられ仲良くなって家へ来ないかと誘われ、そこでロシアの大金持ちと賭けトランプをしてしまってその後は・・・というストーリー。こんなのは日常的に起こっていることで、水戸黄門のストーリー展開よりわかりやすいのである。既に地球のなんとやらとか外務省発行の手引きでも相当前から警告されている事だ。なのに何故人間は次から次に詐欺師にやられるのだろうか。昔、武田鉄也が「人を信じて傷つくほうがいい・・・♪」なんて歌ってたけど、このままでは人類全員が自閉症&対人恐怖症にでもならないと、詐欺師たちは永久的に跋扈していくのかと嘆かわしい。こんなこと偉そうに書いてる俺も、例えば「ある日見知らぬモンゴル人がやってきて、真っ白な紙片が1万円札に変わる」みたいな新手のちょっとだけアレンジされたようなストーリーに出会うと簡単にはまるのかも。あな恐ろしや。



第14話 マレーシア起業&移住大作戦!〜その@ (2005年7月号)

 以前の号では様々なランキングを切り口としてマレーシアでの暮らしやすさを見てきた。日本で悶々とした日々を過ごすものの、別段日本でのしがらみがない方々にはすべて揃った別天地である。日本の5年間の生活費がこちらでは1520年分に相当するので、高金利・リンギットの切り上げ観測も後押しして、今後も小金を持つ移住者は増加していくと思われる。では、日本からこの国に移住するための具体的な資格要件や現状の方法はどのようなものなのか。自身の経験にのっとり今号と次号の2号にわたってお伝えしていきたいと思う。言うまでもなく外国人が他国に移り住むためには、それ相応の在留資格(ビザ)が必要だ。無ビザで滞在し意図的に90日毎のビザトリップを繰り返しながら滞在する者も多いが、最近はイミグレでつかまるケースが多発しているし、一切マレーシアにおける恩典は受けれないのでこのような不安定な方法はおすすめしない。移住プランとして日本人にも有名なのが、マレーシア・マイセカンドホーム・ビザ(MMSHP)だが、これは実質「50歳を超え、年金などの定時収入があるリタイア老人」に限定され、当地では一切の収入を得ることは禁じられている(発覚すれば国外退去)ため現実的な制度とは言えない。それでは若年層がMMSHP以外で定住したい場合にはどうすればいいのか?大まかに言えば次の4つの方法がある。@どこかの学校にもぐりこみ学生ビザをGETする。Aどこかの会社に現地採用で雇用されビザをとってもらう。Bマレーシア人と結婚して扶養ビザを取得する。C法律にのっとりペーパーカンパニーを設立してエンプロイメントパスを取得する。このうち@〜Bはビザ期間が極めて短期間ないし不安定、収入的にも非現実的、目的外の行為が発覚すれば国外退去、ということでまっとうな「移住」という本テーマから外れるので除外したい。残されたCのMy法人設立は、かなり困難なことのように思えるが、まさに誰にも束縛されずのんびり暮らしたい、かつ収入を得たいときには堂々と得れるという一挙両得の方法である。誤解されないよう先に記すが、このMy法人設立の目的は、ばりばり事業を行うことではなく(もちろんそれが王道であるが)、むしろマレーシアでの長期間の在留資格を正当に得るための方法論として、である。最低資本金は法定で約60円。現地出資者などに縛られることもなく、そこらの休眠会社をリニュアルするだけでイージーに会社は設立できる。とにかくビザさえGETできれば銀行口座も開設でき、日本の資産を移動でき、マジで商売しなくてもタネ銭次第で金利だけで生きていける人生が始まるわけだ。次号ではこのスキームについて踏み込んで解説していきたい。次号まで待てない方はWEBで私の名前を検索するなどして問い合わせ下さい(笑)


第14話 マレーシア起業&移住大作戦!〜そのA (2005年8月号)

 前号ではマレーシアに合法的に移住できるベストな方法として、「ペーパーカンパニーの設立による、自身のエンプロイメントパス(就労ビザ)の取得」というワザがあることをお伝えした。日本にいるエセコンサルタントが実しやかな嘘をよく言ってるようだが、日本人がマレーシアに抱く有名な誤解のひとつに「会社設立時はマレー人のビジネスパートナーが必要」というのがあるがこれは大ウソで、2名の日本人が発起人となって最低資本金60円にてちゃんと株式会社(Sdn.Bhd.)はできる。この場合ひとりは日本在住のままでもよい。プラス一定の見せ金(返却される)で10年保証の就労ビザも取得できるのだ。このビザ取得者はエクスパトリエイトIDカードを貰え、マレーシア国民と同じ扱いを受けることができるし銀行口座も免許証も1日で持てる。空港のイミグレもスタンプなしで即通過だ。10年経てば会社名を変更再登記することにより、実質の永住が可能である。もうひとつの大ウソは「厳格な外貨持ち込み・持ち出し規制がある」というやつだが、正解は一切制限などないので日本から資産を送金し、こちらの高金利・円安差益・通貨切り下げなどで資産を倍増させてから、課税もなしにそのまま日本に送金するということができる隠れオフショアにも使える。アパートメントなどの不動産購入も自分名義で件数無制限にできるため、高利回りの賃貸収入を得ることも可能だ。よってペーパーカンパニーをつくる意味は、@最も長期間の正式なエクスパトリエイト・ビザを取得すること A正当に得た収入を法人の所得にして税金を回避すること、の2つに尽きる。タイやシンガポールなどに比べると日本への宣伝下手で誤解されやすいこの国であるが、実のところはアジアいち生活もビジネスもしやすい自由な国だと来て見て思う。ルックイーストのお陰で何かと日本人には便宜も図ってくれるし。とにかく日本の住民票をとっとと抜き、こちらに年間183日以上滞在するだけで多くの特典をGETできるわけだ。最近日本からも移住や法人設立・資産運用などの相談をよくいただくが、ともあれ日本でくすぶっている人には2回目の勝ち人生を与えてくれるこの天国へ一度視察に来られるのをオススメしたい。



第15話 恐るべしジョブ・ホッピング事情 (2005年9月号)

 当地で人材スカウト業もやってるので、今回は仕事上知りえた当地の就職・転職事情を伝えたいと思う。日本においてももうすでに「終身雇用」は過去の言葉となり、転職は当たり前のチョイスとなっているが、ここマレーシアの転職の激しさは極まっており、知人の会社に電話したら「もう辞めちゃっていないよ・・・」みたいなことは頻繁にある。こっちの調査会社の転職意識調査データによると、「過去5年間で転職した経験がある」者は74%、「今後2年以内に転職したい」者は39%にものぼり、これは日本の同じ調査の2倍以上のスコアだ。JobStreetという当地最大の人材紹介会社のマネージャーから聞いた話だが、転職希望の登録者は80万人もいて(この国の全就労者が1000万人しかいないのに!)さらに毎日2000人が新規登録をネット経由で行うという。従業員を抱える経営者からしてみたら毎日が疑心暗鬼だ。知り合いの日系企業の社長が、「24時間社員のEメールやWEB閲覧を社長のパソコンからモニタリングできる」システムを導入したと自慢していたが、それ以来社長の仕事は終日モニタリングばかりになったという・・・。あるマレー人男性の例だが、彼は日本の大学を卒業して、その経歴をウリにして31歳の若さでなんと6回も転職している。顕著なのは転職するたび給料があがっていることだ。つまり当地の「転職」の大目的はキャリアアップとか自分の可能性の追求などということではなく、給料を100リンギ(約3000円)でも上げていく事に尽きるのだ。無論「愛社精神」などという文字は存在しない。
この状況は、雇用する側の会社のほうにも原因があると思っている。30歳のホワイトカラー平均で3000リンギ(約90000円)という月給水準は国の経済成長度から考えると決して高くない。マレーシアでは減給や降格は基本ご法度だが、反対に経営者は昇給や昇格させるのをいやがる傾向がある。いくら仕事で高いパフォーマンスを上げても将来のキャリアアップが見えないとなれば、突如会社を去っていく者たちだけを一方的に責められない。当然空いたポジションを埋めないと業務に支障がでるので、ウチのような会社にお呼びがかかるわけだけど、可愛そうにワリを食ってるのが毎年32万人ほど誕生する新卒のフレッシャー達だ。会社側からしたら、空いた穴は同じような知識・スキルと経験を持ったベテランで埋めたいという要望があるため、新卒クラスの転職希望者にはなかなかお呼びがかからないという悪循環が発生してるのである。かくして、一流大学を出たばかりの賢そうなお姉さんが、カラオケで客の相手をするというような事態が多々生まれてもいる。
そんなわけで、とにかくあちこちの会社から毎日のようにオファーが入ってくるけど、日本人(特に女性)はマジメということでウケがいいので、現地採用という立場でよければ(それはそれで気楽でいいので)海外に飛び出てみるのも悪くないかも。


第16話 マレーシア人にとって「クルマ」とは?? (2005年10月号)

 今回は車事情について。生活平均物価は非常に低いマレーシアだが、自動車の取得価格は異常に高い。日本車の新車など買おうものなら、カローラのような大衆車ですら600万円くらいする。自分の車は走行17万kmの日本ではとっくに廃車になるべきシロモノだが、それでも170万円した。ほんまに車は家より高いのだ。当地には「プロトン」「プロドゥア」という自国が誇る2大自動車メーカーがある(走行中にハンドルが取れたという話も聞くので、欲しいとは思わんが)ため、政府が自国産業保護の観点で輸入車に関しては200300%という狂人的な高関税を課しているのが一番の理由だ。5月頃に日本とマレーシアのFTA締結が報道され、その中の目玉に「自動車関税をこの先10年で無くす」ということで、それを当て込んだ日本の中古自動車販売業の関係者からたくさん問い合わせが入ってきたが、世の中そうは甘くないのである。日本との締結に先駆けてこの国はタイなどアセアン他国からの車の輸入関税を引き下げたが、実はそれと引き換えに物品税を引き上げたために却って消費者価格は上がったという冗談のようなことがあった。さらに、これぞマレーシアという制度がAP(輸入許可証)の存在。昨年度は7万台の輸入があったとされているが、これはすべて特定マレー人の利権の下に置かれ、一般のインポーターや販売会社は彼らからその権利を金で買い取ってそれを転嫁して販売するので、善良な市民はボロイ車1台買うのすら、清水の舞台から100万回は飛び降りる悲壮な覚悟がいるほどクレイジーなプライスになるわけだ。
なのに街にはベンツなどの高級車が溢れている。トヨタのレクサスやハリアーなどは大人気だ。買えば1500万円くらいは余裕でいくだろう。それを運転しているのは決して裕福には見えないランニングシャツと半パンのオヤジ。これには訳がある。ひとつめはマレーシアの銀行は日本の街金のように笑顔でイージーに金を貸し付けてくれること。もうひとつの理由は、自動車に関しては転売価格があまり下がらないということだ。人気車種であれば23年乗っても買値と売値が変わらなかったり逆に高く売れたりする。こんな環境に後押しされ、楽天的で見栄っ張りのマレーシア人は思い付きで高級車を買うし、友人などは会うたび車が変わっている。ある意味で、投機も兼ねた財産になっているわけである。


第17話 ムスリムの永遠の謎 (2005年11月号)

 またまたプアサ(断食)のシーズンに突入である。非常にわかりやすく国の経済効率がおちているのがわかる。昨年は昼間からオフィスで死んだように動かない人や、数日間行方不明になる人に驚いたが、今年はもうそっとしておいてあげよう、という慈悲すら感じる。誤解のないように説明しておくと、これは国民全員がやっていることではなく、人口の主流を占めるマレー人(ムスリム)だけに課せられた宗教上の精神修行である。日本人やチャイニーズ、インド人は関係なくメシを食いまくっている。またムスリム達も日没の時間とされる夜の7時以降は飲食が解禁される。1ケ月「絶食」したら死んじゃうもんね。しかし、である。昼間にマレー人の前で(ウチのオフィスにもいる)飲食はおろか、たばこを吸っても恨みがましい目を向けられると、とてつもなく自分がヒドイ鬼畜のように思えてきて切なくなったりする。イスラムの教えの中には他にも厳しいものがあり、飲酒・ノンハラルの店への出入り禁止は勿論だが、女性のトゥドン(頭巾)着用、未婚の男女が2人っきりでいることの禁止など、よくもマホメットはこのような恨みを買うような戒めをつくったもんだと恐れ入る。恐怖の書「コーラン」に比べたら、日本でベストセラーになった「禁煙セラピー」などは赤子のような存在である。日本人は別に好き勝手やってたらいいわけであるが、イスラムを冒涜するようなことだけは許されない。例えばやっちゃいけないのは、立ちションである。日本人にとっては居酒屋で一杯やった後のガード下でションベンをして1日を締めくくるというのが自然な儀式であるが、こちらでは逮捕である。あとムスリム女性との関わりも厳しく、職場で冗談で女性のお尻をタッチして強制送還になった日本人や、ホテルの部屋で一緒にいてただけで宗教警察にしょっぴかれ結婚させられた日本人を知っている。ついでにいうと、モスク(礼拝所)の手洗い場でションベンをしたオヤジも知り合いである。彼は誰にも見つからなかったが、これは銃殺ものである。自分に厳しい戒律を課し、天国に行くために清く正しく生きていこうというムスリムの教義そのものは立派だと思う。ただそこまでやらせるなら、コーランに「勤勉であれ」という言葉を何故入れなかったんじゃい!とマホメットにクレームをあげたい。


第18話 ブミプトラ施策(マレー人優遇施策)の行方 (2005年12月号)

 2020年に先進国の仲間入りを目指しているこの国であるが、現在大きな政策上の矛盾を抱えている。それは実質的な「人種差別」である。マレーシアは多民族国家であり、約6割を占めるマレー系のほかは中国系とインド系が残りを構成している。先住民族であるマレー系はブミプトラ(土地の子)と呼ばれるが、政府は彼らにだけ特別の「配慮」を行っている。例をあげると、大学の入学枠や奨学金制度の優遇・預金利息や住宅ローンなど金融面での優遇・納税の免除・公務員や大手企業への就職優遇やポスト保証などなど、いわゆる同じ「マレーシア人」でもマレー系は数々の特典で守られ、その他の人種にはその規定がない。もともと国土には先住民であるマレー系がのんびり暮らしていたが、その後中国大陸からは華僑が押し寄せ、宗主国であった英国がインドからプランテーション労働者をたくさん連れてきた結果が現在の人種構成である。マレー系から言わせると、呼びもしていないのに外部から商魂たくましい他民族が押し寄せ定着化してしまい、いずれは経済的な侵略を受けてしまうということである。これは誰もがうなずくことだが、マレー系に比べたら中国系・インド系の商魂や生活エネルギーたるや百倍くらい凄い。これは当のマレー人も認めているだろう。だからこそ1つの国家の同じ国民なのに、民族的に「侵略」されてしまうという怯えがそこに存在する。この施策は「弱者」であるマレー系を守るためだけにあるといってよい。
 しかしその反対にどういうことが起こっているか。温室で守られたマレー系はますます競争力を失い、特権を利用したワイロで生計をたてることを夢見る。企業は使えないマレー系の採用を敬遠し、街には失業してブラブラしているマレー系が徘徊する。これは悪循環以外の何者でもない。かつて前首相のマハティールが涙を流しながら「これは大いなるマレー・ジレンマだ」と演説したことがある。このブミプトラ施策を継続しても、やめても問題が起こるのである。国のGDPや経済成長率はあがり、アジアトップクラスの治安と先進国並みの発展を示しても、根っこにはこのような矛盾が横たわっているのだ。


第19話 こんなのでいいの?教育事情 (2006年1月号)
 
 英週刊誌のザ・タイムズがこのところ発表した「世界の大学ランキング」という調査で、昨年89位だった国立マラヤ大学が169位に転落した。マラヤ大学はマレーシアの最高学府と呼ばれる大学で、この結果をうけて首相は遺憾の意を表明し同大学に対して何らかの対策をとるように求めたという。産業インフラや経済指標は今のところ一応右肩上がりで推移し先進国への順調な道のりを歩んでいるように見える。しかしである。この20-30年で一番進歩していないのが教育水準や意識ではなかろうかと思う。マレーシアの初級教育は一部で英語化がはじまったものの、基本はマレー・中国・インドの3大民族が各言語でそれぞれ別に学んでいるのが大きなマイナスである。増え続ける人口に学校インフラや教師の数が追いつかないため、授業はいまだに午前と午後の2部制で運営され、そのくせ休暇だけはふんだんにある。おそらく日本の義務教育で規定される時間の半分にも満たないのではないかと思われる。こんなお粗末な学校教育では国力など上がるわけはない。今ブームになっているのが「学習塾」で特に都市部の生徒の塾通いが増加しているが、そこで教えているのがなんと、学校での勤務終了後アルバイトで駆けつけてきた学校の教師なのである。学校を退職して塾を開業する教師も後を絶たないという。こんなことでいいのだろうか・・・・。
 そういう初級教育課程を経て苦労して大学を卒業した者にも「就職できない」という試練が待ち構えている。社会経験がない・乏しい英語力とコミュニケーション能力・専攻科目が社会のニーズと合わないなどという理由で、卒業生の大半がスムーズに就職することができない状態である。こちらの文部大臣はいまになって「大学は市場が必要とする人材を育成する必要がある」などとマヌケなコメントを出す始末。したがってちょっと裕福な学生などはさっさと欧米などへ留学してしまい卒業後もその国に留まってマレーシアへ帰ってこないという現象にまで至っている。日本でも学力の低下を引き起こした「ゆとり教育」の悪評は高いが、マレーシアでは「ゆとり」を設けすぎていることに対して誰も問題視しないことが大問題だと思う。


第20話 怒りっぽさランキング!? (2006年2月号)

 先日地元の新聞に「アジア主要国 怒りっぽさランキング」という変な調査結果が発表されていたので、今回はそのことについて。アジア主要9ケ国に対して調査を行ったのはリーダーズダイジェスト社で、このような調査をすること自体まったくヒマというか無意味というか・・・まあ置いといて、結果によると「一番怒りっぽくない=寛容」なのはシンガポール人だということ。逆に怒りっぽいランキングは、トップがタイ人、以下フィリピン・中国・マレーシア・台湾・香港・インドネシア・韓国・シンガポールの順。どんなことに怒りを覚えるか・・・というと、トップは「マナーの悪いドライバー」、以下「列への割り込み」「痰や唾の吐き捨て」「飲食店などのひどいサービス」以下えんえんと続く。しかしながらこの結果には大いに異論がある。「微笑みの国」タイランドの人々が怒りっぽいなんて絶対ウソだし、3位のここマレーシアでも現地人に「怒られた」という経験などない。反対にシンガポールでは、道路をのんびり歩いていたらいきなり訳のわからないおっさんが後ろから来て俺のケツを蹴飛ばした。なのでこのような調査自体えーかげんなモノなんだろうと思う。俺の持論では「先進国ほどストレス社会になり、結果ちょっとしたことで人はキレる」ということだが、これに反論のある方はほとんどいないだろう。電車内の暴力や衝動殺人などが日常化する今の日本などその典型だと思う。
 マレーシアもそうだが東南アジアでは、物事の進行するスピードは概して日本の3倍くらいはかかる。当初イライラしていたがそんなのもすっかり慣れた。「トロい」ということは裏返せば寛容で温厚だということでもある。先日も新車らしきベンツの横腹にドカンとクルマをぶつけてしまった。中からコワイおっさんがでてきたが、謝りたおすと「まあええよ」と手を振って許してくれた。日本ではそうは行かないのではないか。仕事でも、日本ではおそらく裁判沙汰になるようなミステイクを何度かやってしまったことがあるが、これらもメシをおごったら笑顔で終わってしまった。さらにマレーシアならではのことを言えば、街を走るクルマはたとえ大渋滞のなかであっても滅多にクラクションを鳴らさない。大阪出身の俺は、当初それを知らずに鳴らしまくっていたら、「クラクションは命の危険を感じた時だけ使うものだ」と説教された。それにしては、木下大サーカスのアクロバットのような運転をする車も多いので、命の危険は多々存在するはずなのだが・・・、ともかく街が静かなのはいいことだ。


第21話 恐るべし 風水 (2006年3月号)

今マレーシアでは中華系の人々中心に「風水」(こちら表記で FENG SHUI)が大ブームとなっている。街には風水グッヅを扱う店が次々に開店し、書店には様々な解説書が並ぶ。その火付け役・旗振り役になっているのが「リリアン・トゥー」というオバサンであり、この国では知らない人はいない。風水の本場香港で銀行の頭取や大手デパートの会長などの経歴を経て、風水を研究し尽くしその大家となってからは、いまやマレーシア版「細木数子」のような存在となり、テレビに登場しない日はないという恐るべし状況になっている。経済界の実力者たちも、まず彼女に相談をもちかけ、噂では1週間の相談費用で数千万円の稼ぎがあるらしい・・・。著書は50冊以上、世界中で28もの言語に翻訳されたりもしているが、この度一緒にやってる事業パートナーが、日本語での翻訳を行うこととなった。さあ困ったのはそれからである。彼女の著書の翻訳を通じて、パートナーの頭の中は完全に風水理論が確立した。顔をあわせるたび「陰と陽」とか「五行の法則」とか「クア・ナンバー」などというわけのわからん言葉を浴びせられる。それはいいとして事務所が共同なので、「鵜子さんの机の向きを変えなさい」・「金魚をすぐ飼いなさい」・「風鈴を吊って、専用の扇風機で常に鳴り続けるようにセッティングしなさい」・・・・うるさいことこのかたない。しまいには「事務所のドアをつけかえる」だの「毎日笑顔で眠りにつけ」だのちょっとヤバイ雰囲気に突入している。
 しかしである。彼のコメントに素直に従った結果、急にお金(=仕事のリクエスト)の電話が国内から日本から激増したのである(ホントの実話)。かくして、いまや私も「風水のミニ大家」に変貌できたのは言うまでも無い。風水は「宗教」とかではなく「科学」であると、こっちのチャイニーズが言ってたけど、しかしながら、一度建てたビルディングをぶっこわしてまた建て替える、という金銭感覚だけはいまだについていけないでいる。


第22話 仰天珍事!マレーシアの郵便の謎 (2006年4月号)
 
 クアラルンプールのおよそ200km北方にイポーという中都市がある。そのイポーから投函された一通の手紙が、なんと20年後にKLのあて先に届くと言う「事件」が最近あった。その手紙の差出人はイポーに住むウォンさん、そして受取人はKLに住むタンさん、ともに35歳の男性である。実はかつて2人は近所に住む大親友だった。その後ウォンさんがイポーに引っ越してしまい離れ離れになってしまったが、15歳のときに「父親の誕生日パーティーを行うからイポーに遊びに来て!」という手紙をタンさんに出したのだ。そしてその手紙が20年の歳月を経てタンさんの手元に配達されたということである。タンさんはその手紙を見てすぐにイポーに駆けつけたのだろうか?ウォンさんの父親はいまも生きているのだろうか?そもそも手紙は20年間もどこを旅していたのだろうか・・・・?さまざまな疑問が生じてくるが、その記事を見て自分にも思い当たることがあった。京都に住む母親が手紙を出したという。通常は1週間以内にはこちらに着くのだが1ケ月経っても一向に着く気配がない。これはどうやら紛失だろうということであきらめていたら、もっと後になってその手紙が配達された。封筒の表を見ると、Delivered to Thailandというスタンプが押されているではないか。つまりこの手紙は日本から行き先を間違えてタイに上陸してしまい、その後マレーシアへ転送されてきたわけである。となるとこれは日本の郵便局のミスだったのか?と考えたりもするが、ともかく律儀にきちんと配達してくれたタイとマレーシアの郵便機関の姿勢には敬意を表したいと思う。ここまで遅れるのならいっそ「タイムトリップ郵便」などと銘打って、数十年後にメッセージを届ける新手のサービスを始めればいいと思うが、アジアの場合はさらに数十年の遅れが生じる可能性が多々あり、そうなると受取人が死んでしまっているということが往々にして起こるため、やはりやめたほうが無難だろう。


第23話 国産車Boleh! (2006年5月号)

 マレーシアは自国の自動車ブランド2社を有する国である。プロトン社、そしてプロドゥア社と呼ばれる会社がそれで、前者が日本の三菱自工、後者がダイハツ工業の技術供与を受け独自のブランドを出しており、国内の走行車両の70%以上はこれらナショナル・カーである。マレーシア人は「自国が生み出した誇りある自動車」とのたまうが、我々日本人からみたらロゴと車名だけが異なる「ミラージュ」や「ランサー」や「ミラ」や「ムーブ」がごろごろ走っているだけで、道路風景は限りなく日本のそれに近い。プロトンが最初の頃にヒットさせた「サガ」という車は、どこから見ても往年の「三菱シグマ」である。目には見えないエンジンとか足回りは日本のものをそのまま使ったらいいと思うが、「国民車」を標榜するのであればせめて外観くらいはこっちオリジナルなもので勝負してほしかったとつくづく残念に思う。それに比べたらインドの「アンバサダー」という車などはまるで重戦車のような激しい乗り心地であったが、個性と自己主張があったと思う。  
 ところでマレーシアで輸入車の新車を買おうと思うと激しく高い。たかがカローラで300-400万円もする。人気のレクサスなどゆうに1000万円を越える。中古車も新車とそんなに変わらない。ホンマに車は家よりも高いのだ。これは政府が自国車保護をするために輸入車にはクレイジーな関税+AP(輸入許可費用)をかけているからに他ならない。(国民車はだいたい100-200万円のゾーンである)私の日産の中古ワンボックスは、買った時点で7年落ち、走行距離は13Kmだったがそれで170万円した。(ちなみに毎月確実になんらかの修理費が発生し、修理費用総額が買値を上回る日は近い)先日もGダイ編集長がKLまできていただいた際、この車であちこち案内することが申し訳なかった。すんませんSさん!痔になってませんか? 無理してボロイ日本車を買うよりもマレーシア車の新車を買ったらいいじゃん、と思うでしょ?ところがどっこい、マレーシア人であってもマレーシア車はいやだという人が多い。ローカルの友人はひしゃげて原型をとどめないホンダアコードに乗っているが、プロトンは新車でもほしくないと言い切る。こういっては失礼なのだが、例えば走行中にハンドルが取れることはザラにあるらしい(本当)。悲しいことに品質は悲しいくらいわかりやすく「安かろう悪かろう」なのだ。
 今年から日本とのFTAが発効し、輸入車の関税が段階的に下がっていくことになった。徐々に「外車」も買いやすくなるだろう。それに対抗するように、この4月から国民車2メーカーも平均で7%の値下げを実施する。しかし今後、その分いろんなモノがさらに脆くなっていくのではというのが私の懸念である。走行中に今度はタイヤがすぽすぽ抜けていくのでは?とも思える。そう考えると自分の命を守るために?どんなにボロくてもやはり日本車に乗り続けようと思う。


第24話 近親憎悪?シンガポールとの確執 (2006年6月号)

 新聞を読んでいると結構な頻度で「マレーシア政府とシンガポール政府の間で・・・・の件で揉め事になっている」というくだりのニュースにつきあたる。最近で言うと「第二コーズウエイ事件」だ。マレーシアとシンガポールのはコーズウエイという橋で結ばれているが、昨今行きかう人の数が増加の一途をたどり大渋滞を巻き起こし始めたため、両政府の間で第二ブリッジ建設の話が以前からなされていたが、橋のルートの問題や両国がそれぞれ主張するさまざまな問題が一向に歩み寄らず、結局ご破算になってしまった。ローカルの人間に聞く以上、別に致命的な問題があったわけでもなく、両国にとって不利益になる話でもない。両国が大人の対話さえおこなえば橋などあっという間に架かるという話である。これに限らず両国はいままでにも、空軍の訓練時の領空侵犯の問題、シンガポールがマレーシアからパイプラインで輸入している水道水の問題、シンガポール観光客がマレーシアで犯罪に会う問題など何かあればことあるごとにケンカをはじめてしまう。ケンカの種をお互いが日々探していると言ってもいいくらいだ。民族的にも文化的にも非常に似通った隣国がなぜ仲が悪いのか・・・。かつてイギリスから独立したとき、両国はひとつの国(マラヤ連邦)であった。しかしマレー人優遇を掲げるマレーシア政府と、華人が人口の大半を占めるシンガポールの間ですぐに軋轢が生じて、たった2年でシンガポールはマラヤ連邦から追放されて都市国家となったわけである。当時はマレーシアドル(リンギ)とシンガポールドルは等価であったが、やがてシンガポールがどんどん先進国となりいまや通貨価値では2.5倍、一人当たりGDPでは7倍もの差をつけられている。2020年に先進国入りを目指したいマレーシアからしてみたら、あのときシンガポールを追放さえしなければもうちょっとマシな先進国になっていたのではないか、との思いが逆に「近親憎悪」を掻き立てるのではないか。すこし前まで両国には、マハティールとリー・クアン・ユーという卓越したトップがそれぞれ君臨していた。そして両者はそのアクのあるキャラクターをもってことあるごとに火花を散らしてきた。それぞれが後継者に道を譲った現在もそのしこりは続いているようだ。政府間で緊張関係が絶えないのに、今日もシンガポール人はマレーシアのカジノに大挙して押しかけ、半分以下の価格のガソリンで車を満タンにしてシンガポールにまた帰っていく。しこりを廃して、補い合う関係を強めるのがどちらにとってもいいことだと思うのだが。


第25話 ついにヤラレちゃいました・・・ (2006年7月号)

 アジアに出てきて3年目。遅ばせながらついに泥棒に遭遇してしまった。正確に言うと泥棒というのは正しくなくって、天才的な「置き引き」に会ったのだ。あれは昼食を終えて戻ってきたオフィスのけだるい午後1時。ちょうどその日は秘書の女性が仕事を休んでいて自分ひとり。そんなところにドアチャイムが鳴り、扉を開けると制服を着た若いインド人2名が立っていた。どうやら運送屋らしい。聞くとウチの会社に荷物が届いているが、大変大きなサイズなので今1Fのビル入り口に置いてあるのだが、一度その荷物がほんとうにウチ宛のものかどうか一緒に確認してほしいという(ウチの会社があるのは4F。しかもエレベータはない)。俺はまったく疑わず、ひとりの奴と下に降りた。もうひとりはトイレを貸してほしいというのでウチのオフィスに一瞬残ってから続いて降りてきた。下にあった大きなダンボール箱の宛先を見るとウチの会社ではなかったため、結局「間違い」ということで彼らは謝って去っていった。事務所に戻って「さあ仕事の続きだ・・・」と思った瞬間目が点になった。ついさっきまで俺のデスクの上に置いてあった最新型のノートPCの姿がないではないか!しばらく呆然として、それから事態を理解するまで30秒くらいかかった。あいつらだ!階段を駆け下り外に飛び出して彼らの去っていった方角を追いかけるも、当然ながらその姿はどこにもなかった・・・・。俺は彼らの見事な「連携プレー」にまんまとはまってしまい、時価30万円弱のノートPCとその中に記録されていた1ケ月がかりの仕事の情報を持って行かれたのだ。その日はショックで仕事にならなかった。今まで犯罪にも怖い目にも一度として会わなかったせいか、完全に緩んでいたとしかいいようがない。
 マレーシアでもよくあることなのだが、例えば日本人がトランプ詐欺などで騙された、という話を見聞きしたら「ほんとアホなやっちゃな・・・」と小馬鹿にしていた。「俺はぜったい騙されヘンでー」という強力な自信もあった。しかしこの日を境に俺はとっても謙虚でそれでいて小心な男になった。それでもあいつらに言いたい。「インド人よ、お前らが取り忘れていったACアダプターとマウスを追加でくれてやるから、俺が1ケ月がかりでまとめていた仕事のデータを返してくれ!!」


第26話 前首相 vs 現首相!? (2006年8月号)

 ここ最近、前首相のマハティールと現首相のアブドーラの間での「舌戦」が頻繁に起き、従来1枚岩でやってきた2人の関係が穏やかでなくなってきたと新聞各紙が騒ぎ立てている。マハティールといえば、強いリーダーシップのもとマレーシアを急激に先進化させてきた世界屈指の政治家であると同時に、アジアを代表して欧米とも対等にわたりあってきた強者でもある。1997年のアジア通貨危機の時にはその発端と言われるジョージ・ソロスを名指しでボロクソにこき下ろしたことも有名な出来事だった。しかし一方でそのスタイルは非常に独裁的で在任中も側近の首をどんどん切ったり投獄したりと批判も浴びてきた。まあよくも悪くも非常に強烈なキャラクターの持ち主であったことは誰も否定しないだろう。そのマハティールも22年という長期政権から引退し、後任のアブドーラ・バダウィにバトンを渡したのは3年前のこと。その潔さに誰もが心打たれたものだ。
 後任のアブドーラは前首相とは180度対照的と言っていいくらい穏健でソフトな人柄で、比較したら正直物足りなさを感じてしまうくらい癒し系の人物である。しかし、今までマレーシアにはびこっていた賄賂や汚職を一掃しクリーン化を進めだしたところなどは、マハティールに対する挑戦とも受け取れた。前首相も最初の頃はそれでよかったのだろう。引退後はめったに新聞にも出ず後任の首相を背後から応援しているように見えた。しかし今年になって突然アブドーラの施策全般を強烈に批判しだしたのだ。火種に当たる物はいろいろあったが、マハティールが国策としてすすめていた第二コーズウエイ(シンガポールとの間の大橋)をアブドーラが財政上の理由で凍結したこと、あるいはマハティールの肝いりで誕生した国産の自動車メーカーのプロトン社のことをアブドーラが「国際的な競争力は全くない」と批判したことなどがマハティールの逆鱗に触れたようである。確かに自分の懐刀だった人間が自分を批判しだしたとしたら、それは面白くないことはわかる。しかしだ。男が一旦潔く身を引き、後任に任せると宣言した以上は、そういう言動は外国人の自分にすら見苦しく映る。ましてや最初から背後で院政を引こうなどと画策していたのであれば、あの潔さはウソだったということになり、人々は間違いなく前首相に失望するだろう。
 日本でもいよいよ長期政権を誇ってきた小泉さんが退陣する。テレビニュースなどで発言を聞くと非常に潔く気持ちの良さを感じる。一方で不祥事を起こした議員や経営者が、その椅子にしがみつこうと詭弁を繰り返すのを見るととても醜く見える。人間の本当の価値は引き際の鮮やかさと、引退後出しゃばらないということに尽きると思う。誤解されるのを承知で書くが、「元気過ぎる老人」は害以外のなにものでもない。


第27話 よくわからん?行政区分の話 (2006年9月号)

 マレーシアの国土面積は日本とほぼ同じである。正確には09倍くらいである。大きくは西マレーシア(マレー半島部)と東マレーシア(ボルネオ島)に2分され、この2つは物価や民族構成、宗教などあらゆる面で別の国のようである。国土は13の州によって構成されており、各州にはそれぞれ州首相(日本の知事よりは権限が上)が自治をとっている。日本の47都道府県とかタイの76県という区分けと比較すると結構大ざっぱである。その州行政の中心部になるのが「州都」と呼ばれる町で、名の知れたところではジョージタウン(ペナン州)、ジョホール・バル(ジョホール州)、コタ・キナバル(サバ州)などがある。一方各州において一定の人口条件や経済条件に達するとその町は「市」として認定されることになっている。現在、市として認定されたのはたった12都市だけである。(クアラルンプール・イポー・ジョージタウン・マラッカ・シャーアラムなど・・・)ここでややこしいことがある。日本では県庁所在地は間違いなく「市」クラスの町であるが、マレーシアでは13の州都すべてが必ずしも「市」でない。別の言い方をすれば、12の市は全部が「州都」ではないということだ。
 
ここまでは自力の調査でなんとか把握した。しかしそれより下位の区分についてはマレーシア人に尋ねても何通りものバラエティあふれる解釈と回答が返ってくるので、未だに正確なことはわからない。タウンシップ(街)という単位だという人もいれば、区なんじゃないかという人もいる。いやいやシンプルに町とか村なんだと断言する人もいる。驚いたのは自分の自宅の住所を正式にわかってない人がいたことだ。これは自分がどの行政区分に属しているのか把握していないと言うことで、まあ呑気な国である。国も国でかなり頻繁かつ勝手に市境を変更したり、統合したりするのに、そんなことをきちんと広報しないから混乱するのも仕方ない。地図を買っても、見事なまでに地図会社ごとに勝手な線をひいているので最初から地図は見ない方がいい。地図会社も基準になるデータがないので、推測でつくっていると思われる。これは賭けてもいいが、この国の中にはどこの市にも町にも属していない「真空地帯」と「忘れ去られた住民」が多数存在するはずである。まあ国勢調査も住民税も存在しないから、別に住んでる当人が気にしなかったら何事もなく済むのだと思う。


第28話 またもや、ラマダン到来! (2006年10月号)

 またもや断食である。今年の暦は924日からの1ケ月間がこの期間に当たる。(この号が発売される頃には無事終了していると思うが)無論これはマレー人を中心とするムスリムだけの流儀であるから、我々外国人は一切その制約を受けることはないし、「まあお前もトライしてみろよ!」なんて言われる心配もない。しかし困ったことも起きている。ウチの会社には3人の日本人と2人のマレー人の従業員がいるのだが、このマレーに関して言うとラマダン突入後には、とってもわかりやすく仕事の能率が落ちる。いつもならその日中に完了するような業務が、たっぷり3日はかかる。名前を呼びかけても、不思議なことに3秒くらい返事が返ってこない。彼らをじっと観察すると、まるで目を開けて眠っているとしか思えないのだ。マレー語で食事は「makan(マカン)」といい、Sudah Makan?(もうメシ食ったか?)というのが日常挨拶からして、日中に何も口に入れないというのはまさしく修行だと思う。私の会社はマレーシアでは超キレ者のスタッフを揃えた、クールで優秀なコンサル企業だと常々自負しているが、こと断食中に関しては、小学生のサークルなみにまでポテンシャルが落ちる。この時期にややこしい案件が入らないことだけを毎年アラーの神に祈っている。この断食が明けた時、マレーシア全土が「ハリラヤ」という大ホリデイに突入するわけであるが、このときに断食の反動からマレー人たちは3大欲望だけの動物と化し、どこかに出かけたまま帰ってこないパターンもよく見かける。当社の存続がかかっているので、スタッフの身体には密やかに「所在地発信装置」を埋め込んでおこうかと思っている。


第29話 そしてまたもや、ヘイズ到来!! (2006年11月号)

 地震も台風もないのどかなマレーシアだが、ひとつだけ毎年われわれを悩ませるのがヘイズである。エイズではなくって、煙害のため国中が霧の摩周湖のような状態になってしまう例のアレである。以前にも書いたが、このヘイズ、何も知らない人が見ると、街が朝モヤに包まれたようなカンジになり、幻想的かつロマンチックな気持ちになるらしいのだが、居住している者からしてみると憂鬱以外のなにものでもない。人によって症状が異なり、喉のかゆみ・咳・目の痛み・涙・鼻水・頻繁なくしゃみ・皮膚のかゆみ・呼吸困難・頭痛など不快な症状のオンパレードである。さらに怖いのは車でハイウエーを走る際、場所によってはヘイズが霧状になり、急に視界不良になってしまうこともある。昨年の8月には非常にひどい状態のため非常事態宣言がでて、多くの日本人が一時帰国したのも記憶に新しい。ヘイズは山火事の煙とか排気ガスなどが澱んだまま、上空から動かないことが原因だが、一番大きいとされるのはスマトラなど海峡をはさんだインドネシアで平然と行われている焼き畑農業で産出される煙がマレーシア側に流れてくることにある。煙であるがゆえにこれを防ぐ手だてはない。マレーシア政府はインドネシア政府に苦情を申し立てているものの、あまりまともに聞いてはくれていないらしい。雨が降るといくぶんマシになるのだが、乾期の際には雨すらもないので人工雨を降らせるのだが、これが非常にコストがかかるため、はっきり言って焼け石に水となっている。我々の税金を投入して無益な人工雨を降らせるくらいなら、いっそスマトラに乗り込んで、住民に近代農業の魂を叩き込んできてほしい。


第30話 モンゴルに突撃★ (2006年12月号)

 今回私はある任務?を帯びて、厳寒のモンゴルへ出張してきたので、少々脱線するがそのことを書きたい。首都ウランバートルに突入するや否や驚いたのは、モンゴル人の顔が日本人のそれとまったく同じと言っていいくらい共通していたことだ。特に女性は、言葉さえ話さなければ渋谷なんかを歩いているOLや女子大生って言っても通用するくらい可愛い子たちが多数いた。さすがは、遠い先祖が共通しているだけあると感心した。しかし一方でモンゴルならではの驚くべき光景や風習も多数あった。@冬になると多くの家族が草原からゲル(移動式住居)をキャンピングカーさながら市内のど真ん中まで引っ張ってきて勝手に住み出す(当然住所という物は存在しない)Aタクシーの免許は存在せず、やりたい人がその気になった時点で自家用車で人を乗せて運ぶ。Bロシア様式の重厚な建物には派手な看板は一切ないので、その中に入ってそこが何屋さんなのか初めてわかる。 C普通預金の金利ですら18%もあるので、あまり働かなくてもいい人が多い。D国民の80%が夜酔っぱらっている。Eバーで飲んでいると可愛い女の子が「お願いだから朝まであたしを30000トゥグリク(約3000円)で買ってくんない?」などと屈託のない明るい調子で売り込んでくる・・・といった感じで同じアジアでありながら、なんだか宇宙旅行の果てに他の星にでも迷い込んだような気分であった。
 ちょうど時を同じくしていた頃、マレーシアでは超美形のモンゴル人モデルが何者かに射殺され、とどめにC4という軍しか使用しない爆弾で木っ端微塵にされるという猟奇的事件があった。何の共通点もない両国において、唯一同じなのは「北朝鮮」と国交があるということである。彼女の殺害も軍や警察のかなり上層部が関与していたのでは、という噂も飛び交っていたが結局迷宮入りすることとなった。このニュースは何日にもわたって新聞記事になっていたため、マレーシア国民全員が「モンゴル」「ウランバートル」という場所の名前を覚えることとなった。


第31話 マレーシア・エアの憂鬱・・・ (2007年1月号)

 マレーシア・エアライン(MH)はこの国きってのフラッグシップ・キャリアで、隣国のシンガポール・エアと血を分けた兄弟会社でもある。保有機材数では東南アジア最大とも言われ、また2005年には「5つ星航空会社」にも選出されるなど、評価の高い航空会社である・・・はずなのだが、私の眼にはまったくそう映らないのは何故か?世界を襲った原油高でサービスは目に見えるように落ちてしまっている。経営怠慢により人員整理や不採算路線への取り組みを積極的には行わなかった結果、累積赤字が山のように積もり、ついに政府は国内線96路線の免許を取り上げ、ライバルであるエア・アジアに移管してしまった。MHはようやく今、従業員の希望退職を募り、海外不採算路線(福岡便など)を縮小し再建に向かって動き出しているが、サーチャージを含めた航空運賃は東南アジアで最も高いと言われる水準のままである。飛行時間たったの40分のシンガポールですら821リンギ(約26000円)もするため、庶民はますますMHから遠ざかってしまっているし、私自身が日本へ出張するときはたとえ遠回りでもTGSQを利用することが多い。MH